ものつくりの精神

沢山の古い絵を見ました。無名の絵だけどふとその人が見えてくる瞬間があります。何故この絵を描いたのか。それぞれの人生が浮かんでくる。人生を絵に捧げた人たちのものは心を動かし、ものを超え、強さを待つ瞬間がある。

アートや工芸、ファッションや音楽などジャンルレスであり、それぞれものを作る精神はその時代の背景でもあり象徴でもある。美術とは何か。

美術を見る目が必要と言われるが僕はそれよりももっと必要なものがあると思っています。勿論素晴らし技術を目の当たりににするとすごいなと思うけど、無名の絵でも心を動かすものが沢山ある。必要なのは自分がどう感じるか。人の良いものが決して自分の良いものとは限らない。受け入れることから始まり、僕の扱う工芸や洋服にもそういった精神が宿っているのだろう。

先日ある方から工芸のこれからのものつくりというテーマを問われたことがあります。僕がお店を始めてからずっと思い続ける見えないかたち。

杉本博司の海景、黒田泰三の器、円空の仏、ジャコメッティの人体、ブラッサイの石の彫刻、ブランクーシの彫刻、オラファエリアソンの表現に至るまで表現方法の違いはあるが最終目的は同じになった。これからはそうであってほしいと願っています。

suzuki takahisa